本研究室は、地球温暖化にともなう海洋・海氷と気候システムの変化を物理学的に解明することを目的としている。気候力学の視点から大気と海洋の相互作用を考えつつ、とくに海氷と海洋の物理過程に焦点を当てる。北極から中緯度の沿岸・湖沼に至るまで、観測・数値モデル・理論解析を組み合わせ、海外研究機関との国際連携を基盤に研究を展開する。得られた成果は、海氷変動や沿岸環境の将来予測に応用している。
北極海は地球上で最も急速に温暖化が進む海域であり、海氷減少は気候システム全体に大きな影響を及ぼす。海氷下の乱流や熱フラックスを解明し、その成果を海氷変動予測や気候モデルの改良に役立てている。本研究は、ドイツ、ノルウェー、フランスなどの研究機関と連携し、国際観測プロジェクトにも参加している。
代表的な研究成果:
ベーリング海峡付近で観測された冷水湧昇帯のロシア船を用いた現場観測と数値シミュレーションによる解析
冬季に形成されるポリニアを通じた海氷生成と海洋深層水形成の過程を理論や数値モデルを用いた明らかにする。オホーツク海が北太平洋全体の海洋循環に果たす役割を明らかにする。
代表的な研究成果:
オホーツク北西ポリニアの形成メカニズムと海洋深層水の高密度化に関する数値実験
海洋の内部重力波の発生や伝播、それが引き起こす乱流混合の実態を船舶観測と数値シミュレーションを用いて探求する。栄養塩供給やエネルギー散逸を通じて、海洋生態系や気候システムへの影響を理解する。
代表的な研究成果:
台風の通過に伴い日本海で発生した内部重力波の観測風景と解析結果
温暖化による成層強化と乱流混合の変化が、湖や沿岸域での貧酸素化を進行させる。水産資源や生態系への影響を定量化し、環境保全・適応策への知見を提供する。この研究では、北極海の海氷–海洋境界層で開発した渦相関技術を応用し、湖や沿岸域の酸素フラックスを直接計測する。
代表的な研究成果: