大学院工学研究科博士前期課程社会環境工学専攻2年の星野聖太君(氷海環境研究室所属)は、第55次日本南極地域観測隊(夏隊)の同行者に選ばれ、2013年11月から2014年3月にかけて南極地域での観測を行いました。
星野君より観測報告が届きましたので、ご紹介します。
(砕氷艦「しらせ」の前で.写真左から2人目が筆者)
北見工業大学 大学院社会環境工学専攻2年 星野聖太です.
私は2013年11月末~2014年3月中旬の間,第55次日本南極地域観測隊(JARE)に同行者として参加しました.南極での体験は初体験の連続で終始圧倒される毎日でした.しかし,宮岡隊長,牛尾越冬隊長をはじめとする観測隊員の方々,日高艦長をはじめとする砕氷艦「しらせ」の自衛隊員の方々の手助けを受け,観測を無事終えて戻ってくることができました.
私は海氷観測の担当で,砕氷艦「しらせ」(写真1)に設置した2つの観測装置で観測を行いました.一つは電磁誘導式氷厚計(以下EM),もう一つはマイクロ波放射計(以下MMRS)です.EMは海氷の厚さを測定でき,MMRSはAMSR2衛星に搭載されているマイクロ波放射計と同じ周波数帯のマイクロ波を観測することができます.将来的にはこの2つのデータを組み合わせ,衛星による海氷観測を向上させることが目的です.
観測隊はオーストラリアのフリーマントルまで移動し,砕氷艦「しらせ」に乗船します.出港まで4,5日程度あるのでオーストラリアにて観測の準備や観光を楽しみました.
オーストラリアを周航してからおよそ1週間程度で海氷域へと侵入しました.昭和基地へと近づくにつれ海氷は徐々に厚くなり,最も厚いところでは約8mにもなります.砕氷艦「しらせ」は,船首を海氷に乗り上げ割りながら進むラミングを繰り返し,2014年1月4日に接岸を果たしました.往路の総ラミング回数は2227回で,この数字が昭和基地周辺の海氷状況の厳しさを物語っていると思います.
接岸後(写真2)は,昭和基地周辺をIceWormと呼ばれるスノーモービル牽引型EM(写真3)を用いて海氷観測を行いました.観測中はここは本当に南極なのかと思うくらい,日差しが強く暖かかったため作業もはかどりました.また観測中はアデリーペンギンが度々現れ,その愛くるしい仕草に癒されました(写真4).
復路でも往路と同様の観測をしながらオーストラリアのシドニーへと戻ります.シドニーまでの航海期間はほぼ晴天が続き,毎日オーロラが見えとても充実していました.
観測自体も無事終え,日々充実した南極の生活を送ることができましたが何点か心残りがあります.それは,南極大陸に足を踏み入れていないことです.もしこのような機会がまたあるのならぜひ内陸に足を踏み入れてみたいと思います.
写真1 砕氷艦「しらせ」
写真2 昭和基地にて
写真3 スノーモービル牽引型EM「IceWorm」
写真4 アデリーペンギン