北海道のような寒冷な気候が,岩石,岩盤に及ぼす様々な影響について,明らかにする研究を行っています。
寒冷地では,冬期に,土の中にアイスレンズと呼ばれるレンズ状の氷の塊が形成されて地表面を持ち上げる「凍上現象」が発生します。近年では,このような凍上現象が,土だけでなく,岩石,岩盤でも発生することが明らかになってきました。例えば,トンネル壁面の背後の岩盤において凍上現象が発生すると,アイスレンズが壁を押して,トンネルの壁面には亀裂が生じてしまいます。このように,岩盤の凍上現象が大きな事故を引き起こす引き金となりえることから,近年,岩石,岩盤の凍上性を把握することの重要性が高まっています。
そこで,寒地岩盤工学研究室では,これまでに全く明らかにされてこなかった岩石の凍上現象発生メカニズムを解明することに取り組んでいます。また,どのような岩石が凍上しやすいのか,岩石の物理的な性質等から,簡単に判定する方法を確立することにも取り組んでいます。
大谷石に形成されたアイスレンズ
岩石,レンガ,コンクリートといった多孔質(細孔が沢山ある)な建設材料を,寒冷地で使用する場合には,必ず凍害という問題が付きまといます。凍害現象は,一般的に,材料中の水分が凍結する際の容積増加が原因であると考えられてきました。また,冬期に発生する凍結・融解現象の繰り返し回数が,材料に凍害現象を引き起こす,最も重要な要素であると言われてきました。
レンガで作った花壇で発生した凍害現象
私達,寒地岩盤工学研究室では,上記のような材料で起こる凍害のうち,特に,レンガで発生する凍害現象に着目して,そのメカニズムを明らかにすることに取り組んできました。その結果,これまでに提案されてきたメカニズムと全く異なる新たなメカニズムで,レンガに凍害現象が発生することを突き止めました。
現在は,上記の凍害メカニズムの発生条件(温度条件や水分条件等)を詳細に明らかにすることに取り組んでいます。また,私達が明らかにした新たな凍害メカニズムが,岩石やコンクリート等の材料にも適用できるのか,検討することに取り組んでいます。
レンガ構造物(壁)で発生した凍害現象