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JABEE

国立大学法人 北見工業大学

水環境工学 [水工学・水環境工学分野]

メンバー

研究コンセプト

現在、地球環境や自然環境を適切に保全し、現代から未来の世代のニーズを満たせる持続可能な社会の実現が、国際的な目標(SDGs:Sustainable Development Goals)とされています。最近では、生物多様性の保全に加え、自然の損失を2030年までに反転させ、2050年までに完全に回復させることを目指すネイチャーポジティブという新しい概念が国際的に注目されています。これは、自然資本を守りながら、経済や社会の発展を持続可能にする新しい取り組みであり、水分野の技術もこの流れに大きく貢献しています。

水分野における最新技術の導入は、ネイチャーポジティブに向けた重要な手段です。たとえば、水処理技術や水環境モニタリング技術の進展により、流域の生態系保全や水質改善が実現可能になり、自然環境を回復軌道に乗せるための基盤を提供します。さらに、気候変動に伴う水資源不足や洪水リスクの軽減に向けた技術革新も、森・川・里・海(いわゆる流域圏)のつながりを維持・回復させるための重要な要素です。

日本政府も2023年に「生物多様性国家戦略 2023-2030」を発表し、このネイチャーポジティブの理念を国内政策に組み込み、水環境分野の技術革新が生物多様性の回復に貢献することが期待されています。当研究室では、これらの最先端技術を駆使し、ネイチャーポジティブな未来の実現に向けて以下の研究を推進しています。

研究概要

本研究室では、水環境や水域生態系におけるブルーカーボンの炭素固定機能に注目し、地球温暖化の緩和・適応策としてのカーボンニュートラルの実現を目指しています。水や堆積物に含まれる栄養塩や有機物、炭素・窒素の動態を計測し、炭素吸収・放出のメカニズムを解明することで、流域圏全体のつながりを再生させ、持続可能な海洋資源の保全に貢献しています。また、これらの知見をもとに、水生植物の炭素固定能力を活用した水域生態系モデルの開発を進めています。

ネイチャーポジティブとは、2030年までに生物多様性の損失を反転させ、2050年までに自然を完全に回復させることを目指す新しいグローバルな取り組みです。本研究室では、自然資本を守りつつ、それを豊かにすることを目指した研究を進めています。具体的には、積極的な栄養塩管理による森・川・里・海(流域圏)のつながりの再生、道東の希少生物(マリモなど)の保全、生態系を活用した防災・減災(Eco-DRR)など、自然環境を回復軌道に乗せるための技術開発と実践的研究を行っています。

気候変動が水環境や水資源に与える影響を評価し、地球規模での気候変動の緩和・適応策に貢献する研究を行っています。最新の全球気候モデルや数値シミュレーション技術を活用して、気候変動がもたらす水資源リスクの予測や、洪水リスク軽減のための水域生態系の管理モデルを開発しています。また、機械学習を組み込んだ水域生態系モデルを用いて、植物プランクトンの異常発生や水質の変化を予測する技術も研究対象としています。

北海道内の河川や湖沼をはじめ、国内外のフィールドを対象に、ローカルからグローバルな視点での水環境・水資源の保全に取り組んでいます。特に、世界自然遺産「知床」や「釧路湿原」、渡り鳥の飛来地である濤沸湖・コムケ湖、特別天然記念物「マリモ」の生息地である阿寒湖などを対象とした環境保全の研究を進めています。さらに、東南アジアや南米、北アフリカなどの発展途上国をフィールドとし、農業水資源の管理や流域の重金属汚染対策を行い、これらの成果を国際協力に役立てることを目指しています。

研究テーマの例

(左)オホーツク沿岸潟湖における水生植物(アマモ)の繁茂状況(コムケ湖),(中央)オホーツク沿岸潟湖における水生植物分布と溶存有機炭素の現地調査(コムケ湖),(右)現地水域で採取された水サンプル中の溶存有機炭素の機器分析

(左)日本最大の湿原・釧路湿原(コッタロ展望台より),(中央)全球気候モデルによる21世紀末の降水量の将来予測結果(シミュレーション),(右)降水に伴う面源からの栄養物質(全窒素)の輸送・蓄積の予測結果(シミュレーション)

(左)阿寒湖・マリモ群生地での水草除伐調査(釧路市マリモ研究室・調査にて),(中央)巨大マリモの内部の空洞(釧路市マリモ研究室・調査にて),(右)阿寒湖・マリモ群生地での風向・風速観測(釧路市マリモ研究室・調査にて)

(左)渡り鳥の飛来地となる泥干潟での地形測量(コムケ湖),(中央)融雪に伴う陸域地下水位を計測するための観測井戸(コムケ湖),(右)オホーツク沿岸潟湖の河口周辺に集まる野鳥の群れ(コムケ湖)

(左)太平洋沿岸の乾燥地帯での灌漑農業(ペルー・イカ),(中央)乾燥地帯における点滴灌漑による農地(ペルー・イカ),(右)水資源の将来予測に関するセミナー(ペルー・ラモリーナ国立農業大学)

(左)重金属汚染河川における水質・流量調査(アルジェリア・ジェルファ),(中央)都市流域での重金属汚染の実態調査(アルジェリア・ジェルファ),(右)都市流域での鉛と水銀に対する水質規制前後の観測地点での濃度予測シミュレーションの結果(アルジェリア・ハラッシュ川,Bouragba et al., 2017)

(左)誘導結合プラズマ質量分析計(微量元素分析装置),(中央)知床東岸河川におけるカラフトマスの遡上と死骸(アイドマリ川)の現地調査,(右)知床東岸河川での遡河性魚類による微量元素輸送量の現地調査(モセカルベツ川)

(左)森林域小河川での水質・底生藻類の現地調査,(中央)連続流れ分析法による河川水中の栄養塩の定量分析,(右)厳冬期の結氷河川での水質と付着藻類の現地調査

研究施設・装置

イオンクロマトグラフ(ICS-1100, Thermo),オートアナライザー(QuAAtro 2HR BLTEC),誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS 7700x, Agilent),蛍光分光光度計(FP-6200, 日本分光),吸光分光光度計(U1900, 日立製作所),微量有機元素分析装置(2400II, Perkin Elmer),ゼータ電位粒径測定装置(ELSZ-1000, 大塚電子),全有機炭素計(TOC-L,島津製作所),原子吸光光度計(AA-6800F,島津製作所),ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS-QP2010,島津製作所),液体クロマトグラフ,多項目水質計(AAQ1182,JFEアドバンテック),不撹乱柱状採泥器,等(以上,共同利用施設を含む)

共同研究

学内では水環境に関連する研究社と連携してプロジェクト研究を行っています.学外では,北海道大学,東京農業大学,神戸大学,広島大学,島根大学,九州大学,等の大学,国土交通省や公的研究機関,民間企業,国外では,ラモリーナ国立農業大学(ペルー),クイーンズランド大学(オーストラリア),ONEDD(アルジェリア),等と共同研究を行っています.

研究・教育

テーマによって研究のアプローチはさまざまですが,フィールドワーク(現地調査),室内実験,機器分析,コンピュータによる解析などを通して研究を行います.フィールドワーク(現地調査)では河川,湖,湿原,水処理施設等に行って採水・採泥や機器を使った水質測定,生物調査,等を行います.室内実験では採取した試料の機器分析を行ったり,水処理の模型実験を行ったりします.コンピュータによる解析では,統計解析や数値シミュレーションを行います.学生は毎週のミーティングで研究指導を受けながら,文献調査,研究計画の立案,研究の進捗状況の報告,学生間での意見交換を行ったりします.本研究室ではグループで共同研究を進めることで,より多くのことを学び経験することが出来ます.大学院ではより専門的な研究を進めることができ,学部レベルでは学べないより高度な専門知識を身につけることが出来ます.また,国内外の学会発表を通じて,全国各地・海外の大学の学生や研究者と交流し,よりいっそう視野を広げることができます.さらに,ペルー,アルジェリア,ベトナム、オーストラリア,カナダなどのフィールドを対象に複数の国際共同研究も実施しており,留学生を受け入れたり,逆に共同研究先の海外の大学に留学したりするなど,国際共同研究を通じてグローバルな感覚を身に着けることも目指しています.

関係の深い授業科目

参考ページ

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