災害は、自然現象と人間社会が絡み合って起こります。その環境に人間活動や社会がなければ、自然現象によって被害を受ける可能性はありません。
「自然現象・外力」が「施設(インフラ)の抵抗力」を上回ったときに災害が発生します(下図)。
雪氷環境は、地球規模の温暖化の影響により、これまで降雪が少ないとされてきた地域への大雪、局地的な豪雪など、近年その環境に変化が見られます。
一方、施設(インフラ)については、今後老朽化が急速に進むことが懸念されており、施設に期待される性能を維持するための管理技術の発展・進歩が喫緊の課題になっています。
わたしたちの研究室(雪氷防災研究室)は、雪氷学(特に積雪)と土木工学(特に道路、鉄道)の境界領域を開拓し、「雪氷災害の軽減防除」に貢献することを目指しています。
具体的には、過去に発生した雪氷災害の事例分析、冬期におけるフィールド観測、衛星画像と積雪モデル研究等を通じ、「利用者をいかに守るか」「情報共有をどうすればよいか」という点について研究しています。
さらに、雪を利用し、雪に親しむための研究にも力を入れています。
積雪断面観測は、雪面から地面までの積雪粒子の形状や積雪各層の密度、温度、硬度、含水率などを調べ、その場所のその時点での積雪の状態を把握するための観測です。
積雪は、堆積してからの時間、雪温、水との接触などによって粒子の大きさや形状が変化するため、下図のような成層構造が見られます。この写真は、2015年3月4日に北見工大キャンパス内での観測例です(積雪深:128cm)。
わたしたちの研究室では、毎年12月~4月の積雪期になると、キャンパス内に設置した観測露場で定期観測を行っています。この様子は、Facebookページ「北見の積雪観測情報」で公開していますので、関心のある方はぜひご覧下さい。
キャンパス内も、なかなか良い観測フィールドなんですよ。
近年、冬期に記録的な大雪が降り、道路交通網の麻痺や鉄道の運休、雪による建物の倒壊などが発生、地域経済や市民生活に大きな影響が生じています。本研究室では、学内外の研究者と連携し、冬期の積雪の特徴を把握するための実地観測を毎年行っています。これらの観測結果を蓄積し、大雪の総合的な解析を目指しています。
本研究室からも参加した「2011-2012年冬期に北海道岩見沢市を中心として発生した大雪に関する調査」の報告書は、日本雪氷学会北海道支部のページに掲載されています( こちら をご覧下さい)。
大雪となった羅臼町での積雪断面観測(2015年2月7日:この日の積雪深は148cm)
積雪寒冷地の道路・鉄道線路は、11月から4月までの冬期間、除雪作業と凍上対策が必要となるため、維持管理に大きな労力を要します。自然災害・人為災害ともに発生しやすい冬の道路・鉄道の防災に有益な情報を雪氷学的見地からユーザーに提供するための調査を行っています。
左の写真:大雪が降り除排雪作業が追いつかない市街地の生活道路
右の写真:強い地吹雪や暴風雪で「ホワイトアウト現象」が起こる(直前の車内の様子)